ここでは、若手リーダーがまず悩む「チーム作り」についてまとめます。
大前提として、チームビルディングは一朝一夕ではできません。
が、だからこそ、上手くいっているのかが見えずに苦しむことが多いです。
特に、自分がチームを率いてから、課題がいくつも顕在化してくると辛くなったりもします。
その解決に少しでも参考になればと思います。
チームの存在意義の確認
自分のチームは何のために存在しているのか。
ここをリーダーである自分自身が理解することから始めましょう。
これは、誰かに言われて決まるようなものではありません。
・自分の上司に言われたから
・前のリーダーが言っていたから
こういう理由でチームの存在意義を決めると、土台が固まらなくなります。
一番大事なのは、チームの存在意義をリーダー自身が決めることです。
もちろん、リーダーが変わったからといって、チームの存在意義が大きく変わることはありません。
それでも、自分で考えて自分で言語化することが大事です。
メンバーはリーダー自身から発するリーダー自身の言葉にしか反応しません。
まずは自分の言葉で整理することが大事です。
これを決める際に、事前に確認しておくべきことがあります。
・会社や組織全体の理念
・会社や組織全体の社会貢献
・全体から見たチームの立ち位置
・チームの実務とその価値の受け取り手
・チームの今後の成長像
これらを確認した上で、自分のチームの存在意義を決めてみてください。
このチームはこれをするために存在している。
このチームはこれをするから存在していい。
このチームはこれができないなら存在価値がない。
そういうものを、1つでなくてもいいので自分の言葉にしておきましょう。
存在意義を共有することからチームは始まります。
それがないチームは、チームの体をなした個の集まりでしかありません。
メンバーの働く意義の把握
この部分の把握が弱いリーダーがほとんどです。
メンバーは何のために働いているのか。
高い志を持って働く人もいれば、給料をもらうために仕方なく働く人もいる。
誰がどういうテンションで働いているのか。
それは、なんとなく観察して理解するようなものではありません。
リーダーが自分から飛び込んで把握していくものです。
最初の1ヵ月を目途に、メンバーの働く意義を把握していきましょう。
そのためにやることはコミュニケーションしかありません。
中でも、メンバーとの「面談」で把握していくことになります。
【面談でヒアリングすべきこと】
①なぜこの仕事をしているのか。
②この仕事を通してやりたいことはあるか。
③あるならどんなことをしたいのか。
④今後のキャリアプランはあるか。
⑤あるならどんなプランを考えているか。
⑥今後のライフプランはあるか。
⑦あるならどんなプランを考えているか。
なかなか普段のコミュニケーションの中では聞けないことです。
「上司と部下の間の面談」という特殊な状況下だからこそ聞けると思います。
ヒアリングする内容は評価に直結しないことを先出しした上で聞いてみましょう。
半分くらいのメンバーは「そこまで考えていない」というリアクションになるでしょう。
それでも、その問いかけがあったことで考え始めると思います。
極論、ライフプランがない人は仕事におけるプランも明確ではありません。
自分がどんな人生を歩んでいきたいか。
これを考えないならキャリアプランなど不要になります。
キャリアプランがないなら働く意義なんてものも出てこない。
まずはライフプランから。
ないなら一緒に考えてあげればいいだけです。
ライフプラン→キャリアプラン→働く意義
この順番に形成していくこと、それをリーダーが把握しておくことが大事です。
自分の長所・短所の把握
リーダーになったからといって、完璧な人間になったわけではありません。
そりゃ当然ですが、メンバーはそういう見方をすることが多いです。
・自分よりも役職が上だから
・自分よりも年上だから
・自分よりも給料が高いから
こういう理由で、リーダーを勝手に「完璧な人間であるべき」と捉えるようになります。
よって、リーダーがまず把握すべきなので、自分の長所と短所。
そして、自分の長所と短所を早い段階でメンバーに開示することが大事です。
自分がリーダーをしている理由はどこにあるのか。
なぜ、上司や組織は自分をリーダーとして抜擢したのか。
そこには必ず自分の長所が関係しています。
まずは自分の長所をしっかり把握しましょう。
真面目な人ほど、これが意外とできないみたいです。
自分は大した人間じゃない。
こんなことをできるのは当然のことだ。
そういう捉え方をしていると、絶対にメンバーと軋轢が生まれます。
自分の長所は良くも悪くも贔屓目なしに、正確に等身大で捉えておきましょう。
そして短所です。
これはリーダーになると見えなくなってしまいます。
メンバーはリーダーの弱点に気づいていながら指摘することはありません。
それをただただ不満として溜め込むことしかしません。
リーダーは裸の王様になってしまうリスクがあります。
自分で気づける範囲の短所は可視化しておきましょう。
自分で気づけない短所も必ずあるので、周囲の信頼できる人に聞きましょう。
自分を裸の王様にしないために、短所は絶対に把握すべきです。
リーダーだからといって完璧である必要はありません。
というか完璧な人間など絶対にいないので、当然不完全な状態でリーダーになります。
だからこそ、自分の長所と短所を正確に把握すること。
長所は完膚なきまでに発揮する。
短所はメンバーに補ってもらう。
これでいいわけです。
自己開示を通して余計なプライドを捨てておくことが大事です。
メンバーの長所・短所の把握
これは言うまでもないと思いますが、必要な手順なので記載します。
メンバーの長所と短所を把握しないことには、チームの相関図が作れません。
チームの相関図とは以下のようなことをまとめたものです。
・誰がどの仕事で長所を発揮するか
・誰がどの仕事で短所を補ってもらうか
・長所が集中している仕事はないか
・短所が集中している仕事はないか
・結論、チームとして機能するか
この相関図を作り込むためには、メンバーの長所と短所を理解する必要があります。
ここで注意しなければならないのは、どうやって把握するのかということです。
人は印象や雰囲気で人を見てしまいます。
自分だけで把握しようとすると、必ず印象に引きずられてしまいます。
必ず複数の目を通して長所と短所を把握していきましょう。
・まずは自分で可視化する(書き出すなど)
・前任者に聞いてみる
・メンバー間でどう思っているか聞いてみる(面談時など)
・成果物を注視する
・勤務中に観察する
他にもまだまだあっていいですが、要するに複数の目で見るのが大事です。
ここで間違った把握をすると大変なことになります。
自分は正当な評価を受けていないと考えるメンバーが出てきます。
できない仕事をできる前提で渡されて苦しむメンバーが出てきます。
メンバー間での軋轢が生まれ、人間関係が崩壊することもあります。
メンバーの長所と短所を把握することは、思った以上に大事なことです。
チームのルーティンワークの把握
これもまた当然中の当然であり、言われるまでもないと思うことかもしれません。
しかし、本当にチームのルーティンワークを全て把握できているのか。
これはかなり重要な課題です。
言語化されていないようなタスクは無数にあります。
それを全て言語化して把握することがリーダーには求められます。
チームの中でとるに足らないようなメンバーが異動や退職でいなくなったとします。
その人がいなくなることなど痛手ではないと思われるような人です。
でも、そういう人がいなくなったときほど、チーム内で問題が多発したりします。
これはなぜでしょうか。
把握していないタスクが存在しているからです。
チームの中でも花形と言えるような仕事は、誰もがその仕事を把握しています。
そういう仕事をバリバリにこなしている人ほど、一点突破型の人材だったりします。
花形分野で活躍していない人ほど、視野が広く抜け目のない人材だったりします。
心の中で「しょうがないな」と思いながら、様々なチームの脆弱点をカバーしています。
まずはこういう人の仕事をよく見てみましょう。
チームのルールや役割分担には存在しない仕事をしているかもしれません。
そういう仕事を見つけたら、すぐにヒアリングをしてみましょう。
・この仕事は普段、誰がやることになっているのか
・誰かに指示されてやっているのか
・自分が休むときは引継ぎされているのか
・自分ばかりがやっているという状態ではないか
・それを不公平に感じたりはしていないか
この地道なヒアリングの中で、言語化されていないタスクが浮き彫りになります。
それらを言語化し、仕組化していくこと。
これがリーダーに求められる「ルーティンワークの把握」です。
単なる業務オペレーションではなく、日々欠かせないが成果に直結しない仕事です。
そこまで把握していないと、チームビルディングは完成しません。
自分の役割の決定
自分とメンバーの長所と短所、そしてチームのルーティンワークを把握しました。
ここまで来れば、あとはチームを組み立てていくだけです。
その初手になるのが、自分の役割の決定です。
リーダーにとって最も重要な仕事は「余裕を作ること」です。
自分に余裕のないリーダーは、突発的な問題への対処ができない。
突発的な問題を即時解決できないと、チーム全体を潰すことにもなりかねません。
よって、まずは自分の役割を決定するのが大事です。
【リーダー自身の役割の決め方】
・自分以外にはできない仕事を可視化する
・自分以外にできる仕事は一切しない
・メンバー構成上の脆弱点は自分でカバーする
シンプルですが、この3点で縛るのが良いでしょう。
まずは自分以外にはできない仕事を全うすること。
当たり前のことですが、意外とできていない人も多いです。
そこは任せてはいけないよというところをしっかり把握しておきましょう。
これは「権限」と「責任」の問題です。
そして、大前提は、自分以外にできる仕事は一切やらないことです。
メンバーからサボっていると思われるくらいでないといけません。
それくらいの余裕がないと、突発的な問題に対処する余力はなくなります。
余裕でいること自体がリーダーの仕事です。
ただし、メンバー構成上の脆弱点は自分でカバーしておくべきです。
チームの相関図のイメージがあれば、どこを自分がカバーすべきかは明白です。
実働は誰かに任せたとしても、確実に自分の手が届くようにしておきましょう。
脆弱点を放置しなければ、突発的な問題は最小限に抑えられます。
問題が起きる前に解決してしまうくらいの感覚が必要です。
リーダーの役割が決まれば、チームは回ったようなものです。
最初は上手くいかなくても、リーダーが日々改善させることができるからです。
とにかくリーダー自身が余白のある状態でいるようにしましょう。
メンバーの役割分担の決定
自分の役割を決定している過程で、メンバーの役割分担もほぼ決まっているはずです。
基本的には、誰かの長所で誰かの短所を補うことが大事です。
しかし、それだけで役割分担は決められません。
チームが回ることだけを考えると、チームは回らなくなっていきます。
回り続けるチームにするためには、もう一歩先まで考えておくことが大事です。
【メンバーの役割分担の決め方】
・メンバー全員の長所を発揮させる
・メンバー全員の短所の顕在化を抑える
・急な欠勤が出てたときのカバーリングを計算に入れる
・次なるリーダー候補には負荷をかける
・一部のメンバーに対する依存度が偏らないようにする
メンバー全員と書きましたが、正直なところ限界はあります。
本来なら適材適所とは言えないような仕事を任せる人も出てきます。
だからといって、現状に慣れてはいけない。
全員の長所を発揮させるにはどうしたらいいか。
これを考え抜くことが大事です。
その思考の過程も、メンバーに開示していきましょう。
3つ目、4つ目、5つ目は矛盾をはらんでいます。
カバーリングはどちらかと言えば「守り」の領域での話です。
誰かが欠けたときに、チームとしての脆弱点が露呈してはいけない。
ここが止まったらまずい。
そういう大きな脆弱点はカバーリング前提で組み立てましょう。
次なるリーダーへの負荷は必須です。
チームにおいて最も替えが効かないのはリーダーです。
よって、リーダーの最も重要な仕事は後継者を育てることです。
在任期間中に後継者を育てられなかったリーダーはリーダー失格。
それくらいのつもりで後継者を育成しましょう。
そして依存度が偏らないようにすること。
これはカバーリングに近いですが、どちらかと言えば「攻め」の領域の話です。
パレートの法則で考えると、成果の8割はメンバーの2割が生み出しています。
何もしなければ、チームの成果は2割の人たちに依存してしまいます。
これを放置すると、チーム内に必ず軋轢が生まれます。
簡単に言うと、2割のメンバーが好き勝手やるようになります。
しかもそれを誰も指摘、改善できなくなります。
成果の依存度が高いと、チームの秩序を作るのが難しくなります。
当然、その人たちが抜けたら全く結果が出なくなります。
今だけ結果が出ていればいいというチームにならないようにしましょう。
不測の事態に強いチーム。
将来性のあるチーム。
この観点で役割分担を決定することが大事です。
報連相システムの決定
チームが機能するには、臨機応変な対応力が不可欠です。
報連相(報告・連絡・相談)は組織運営の基本です。
基本過ぎて、この部分で意味や価値を追求する姿勢が損なわれています。
報連相が1秒でも早く行われる仕組み。
そして、報連相によってチームの推進力が生まれる状態。
これらを作ることがリーダーの存在価値に直結します。
報連相なんて意味がない。
そう思っているメンバーはそこそこいると思います。
なぜ報連相が必要なのか。
その答えが分かっていないか間違えているからです。
まずは報連相の意義を共有するところから始めましょう。
【報連相の意義】
・責任者が責任をとるため
・運営の舵をタイムリーに切るため
・問題に対して1秒でも早く有効打を打つため
・成果を可能な限り最大化するため
まずは責任者がしっかり責任をとれる状態にすること。
チームにおいて、これがとてつもなく大切です。
報連相がない場合、責任は当事者のものになります。
言い方が難しいですが、チームを任されるリーダーは須らく有能です。
会社や組織としても、そういう人材は大事にしたい。
だから、部下の失敗は部下の責任にしてでもリーダーを守ることがあります。
報連相はメンバーを守るためにも必要なのです。
まずはこれをメンバーにしっかり理解させましょう。
そして、チームの運営においては、リーダーの舵切りがとても重要です。
結果の出ないことを延々とやり続けるチームがたまにあります。
これは、舵切りが機能していないためです。
意味のないことは極力やらない方がいい。
少しでも成果につながる行動に舵を切る方がいい。
そのためには、報告がタイムリーに届き続ける状態が不可欠です。
リーダーも一つの情報だけで舵を切ることはできない。
全ての情報が集まって来るから、判断できるわけです。
最速で問題に対処して、最速で解決に導くこと。
これはリーダーにしかできません。
リーダーが問題を把握していないことほど危険なことはありません。
しかし、責任感の強いメンバーほど、自力で対処しようとしてしまいます。
こういうときに、問題が大きく発展してしまいます。
さらに責任感の強いメンバーのキャリアにも影響が出てしまいます。
どんな報告にも顔色一つ変えずに対応することが前提。
変なプレッシャーをかけない。
その上で、問題がすぐにリーダーに上がって来る状態を作りましょう。
成果を可能な限り最大化する。
成果を出せることこそ、リーダーがリーダーになった所以です。
リーダーは自分で成果を出すことはしませんが、その方法論の引き出しは多い。
引き出しを開けた回数がそのまま成果に繋がります。
とにかく相談させる。
相談に乗る。
これがチームの成果を最大化するために必要です。
ただただ仕組みだけに任せるのではなく、リーダーの知恵を込めていく。
これがメンバーの育成にもつながります。
リーダーもメンバーも報連相の意義を正確に理解しましょう。
それができれば、あとは普段のオペレーションの中に報連相を仕込むだけです。
どういう報連相であることが、報連相に意味を持たせるのか。
この観点で報連相システムを決定しましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
具体論というよりは、精神論的な要素が多かったかもしれません。
しかし、それは当然です。
チームの数だけチームの形がある。
メンバー構成が少しでも変わればチームは全く別物になる。
土台にあるのは、考え方と組み立て方です。
どんなチームを担当しても、リーダーはチームとして機能させねばなりません。
初めてでどうチームを作ったらいいかわからない。
今回のチームはさすがに固めるのが難しい。
そういうときでも、この手順でチームを捉えていけば必ず正解が見えてきます。
1)チームの存在意義の確認
2)メンバーの働く意義の把握
3)自分の長所・短所の把握
4)メンバーの長所・短所の把握
5)チームのルーティンワークの把握
6)自分の役割の決定
7)メンバーの役割分担の決定
8)報連相システムの決定
この8点を意識してチームを見てみましょう。
まだできていないことがあるかもしれません。
もしあったらそれは儲けものです。
必ず今よりも良いチーム、強いチームになれるからです。
少しでもその役に立てれば幸いです。
ある先生
コメント